自分は将来◯◯になりたいと思っているのに、なんでピアノを習っているのかわからない。どうしてやらなきゃいけないのか、その理由がわからない。そして、誰もこの質問に答えられない!」

ある日、将来アメリカの大学に行きたいと思っている10代の生徒が、レッスンに来るなりピアノの前で叫びました。
まぁね、、、私も
「音楽をやっておくと、社会に出てから教養がある人ってことになるよ。楽器弾けたら楽しいよ。嫌いでないなら続ければ?」
としか答えられませんでした。ティーンエイジャーに、音楽が人間性を豊にするとかウンチク説明しても、そんなのどうでもいい!!でしょう。
音楽を通して身につけられる能力については
あるには違いないと確信しながらも、「どうして?どうやって?」その根拠と方法に関しては、私の中でも漠然としていた部分です。

先週たまたま書店に立ち寄り、前から気になっていた本を3冊買いました。
そのうちの一冊が、“ハーバード大学は「音楽」で人を育てる“です。
この本は、古代ギリシャから現代に至る長い歴史の中で、音楽がどのように社会と関わりをもち、学問として発展を遂げてきたのかを分析した上で、現代社会での音楽教育の可能性を検証した本です。
そして、以下3つの視点からアメリカの大学における音楽教育事情がまとめられています。

❶音楽が教養科目として大学でどのように学ばれているか

❷音楽を主専攻として学ぶ学生のカリキュラム

❸基礎教育としての音楽の、最新事例

アメリカの主要な大学では、音楽は”主専攻”として学ぶにとどまらず、音楽をひとつの切り口に、21世紀に求められる人間のスキル(コミュニケーション力、問題解決力、協調性、国際理解力、創造力、適応力、イノベーション、情報リテラシー、自活力)に結びつけていくための基礎教養として、“学際的”に学ばれているそうです。

音楽や絵画などのアートで学んだ知識を、異なる状況へと転用する、それが新たな発見やイノベーションへとつながる可能性がある。この本を読むことで、音楽を教養として真剣に学ぶことの意味が、以前よりはハッキリと見えてきました。これからレッスンでチャレンジしたいことも、アイディアとして浮かんできています。

◆スキルを高めるために知識(科目)をどういかすか。

◆教養は知識そのものから知識をを応用する力へとシフトしている。だからパフォーマンスを通して学ぶのである。

〜ハーバード大学は「音楽」で人を育てる。菅野恵理子(著)
アルテスパブリック〜より。

本の中では、ハーバード、ニューヨーク、MIT、スタンフォードなどでの実際の音楽の授業についても書かれているので、進学を目指している方は読んでみると面白いですよ!おすすめです。

さて、冒頭の生徒さんの叫びに戻ります。今、学んでいる最中の音楽が将来どんな風に役に立つのかは、音楽の知識をアウトプットして、別のスキルに結びつける応用段階に進んだ時にわかるのではないかと思います。
学んだ先に待っていることは、その過程では見えてこないのが、教える側にとってのジレンマです。
とは言え、叫んだ生徒は、アメリカに行けば本に書いてあるようなプログラムで引き続き音楽を学んで応用できるのだから、恵まれた環境が待っています。
日本の大学のことはよく知らないですけれど、どうなのでしょうか?

日本にいて、東京でプライベートレッスンを行う私にできることは、どのようなことでしょうか。中途半端で学習が終わらないように、楽器を弾くだけのパフォーマンスにとどまらず、何か別のスキルにつなげていくこと…

できるだけモチベーションを引き出して、
〜様々な作曲家の音楽を弾いてもらい、その曲の歴史的な背景を勉強してもらうこと。
〜異文化への関心や理解を高め、民族や文化の多様性を知ってもらう。
〜時々、グループなどで他人の演奏を聴いて、意見交換してもらう。これは、夏に生徒さん何人か連れて参加する音楽キャンプで試みたことがあります。人の演奏を分析しながら聴いて、良いポイントや改善ポイントを見つけることが、批評する力へとつながります。

そのぐらいの方向付けは、街の音楽教室でも実践していきたいですね。

 

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