■ピアノ教室選び

春の訪れを感じられる気候になりましたね。
新学期に向けて、新しいお稽古を始める計画を立てる時期でもあり、私の音楽教室でも年明けから体験レッスンや新規ご入会のお申し込みが続いています。
友人達からはピアノ教室選びの相談を受けたり、練習について質問を受けたりすることも多くなりました。
ピアノ教室を選ぶポイントとなるのは、家からの距離、月謝、ピアノを習う目的、先生との相性などが挙げられますが、もう一つ重要なのが使用する教本です。
ピアノを好きになって長く続けていくために、どんな教本を使って、どのようなペースで学習していくのかが、とても大切だと思います。
色々なお教室の体験に行って教室選びに迷ったら、どんな教本を使っているのか聞いておくことも、判断の役に立つかもしれません。
教える側の立場としては、決まった教本を使って画一的に指導をするのではなく、引き出しをたくさん増やして、それぞれの生徒さんの個性や環境に合わせて、フレキシブルにレッスンを進めていくことが理想的だと思っています。
そこで、今回は改めて「ピアノ導入本」に焦点を絞って、どのようなタイプのテキストが世の中に出回っているのかを調べてみることにしました。

■導入本には実にさまざまな種類がある

導入本で学習することは、おもに楽譜の読み方と、楽譜を見ながら10本の指を使ってピアノを弾くことです。
楽譜コーナーの前に立つと、絵本のような装丁のカラフルなテキストから、外国のメソードまでずらっと棚に並んでいます。それぞれのテキストには、明確な出版社の意図や学習の方向性を見ることができます。どんなテキストを選ぶかで、一年で習得できることが決まると言えますね。
今回参考にした導入本は以下の8冊です。

①トンプソン 小さな手のためのピアノ教本
②ピアノひけるよ!ジュニア(1)
③ぴあの どりーむ(幼児版)
④バスティン ヤング ビギナー ピアノ プリマーA
⑤みんなのオルガン・ピアノの本⑴
〜〜・〜〜
⑥アルフレッド・ピアノライブラリー レッスンブック1A
⑦ペース・ピアノ教育シリーズ
⑧ミュージックツリー タイム・トゥ・ビギン

※なお、「導入期のピアノ教材に関する一考察」〜大譜表の問題を中心に〜(難波正明、村田睦美著)の文中にある「ミドルCメソード」「ランドマーク・リーディング」などの用語を使用させていただきます。

■ピアノの「音符読み」を学習する方法は大きくわけて2種類

ピアノの音符読みの難しいところは、ト音記号ヘ音記号を同時に学ぶところですね。
これだけたくさんのテキストがありますが、大譜表(ト音記号とヘ音記号)の読み方を学習する方法は、

『ミドルCメソード』

『ランドマーク・リーディング』

の2つの方法に分類されます。上記テキストでは、①〜⑤まではミドルCメソード、⑥〜⑧までがランドマークになっていました。現在はミドルCメソードが一般に普及しているようで、私がこれまでレッスンで使ってきたテキストも全てこの方式でした。

■学習の進め方の相違点

ミドルCメソードとは、左右の親指を真ん中の「ド」のポジションに置き、そこから一音ずつ上下に音域を広げていきます。右の人差し指はレ、左の人差し指はシ・・・という具合に。この方式は小さな子どもにも取っ付きやすく、左右の手の指を順番に鍵盤に馴染ませていくことができます。指10本を使って、知っている歌のメロディーを弾けるようになります。すんなりとピアノに入れるメリットがある反面、この方式の教材を使っていて、共通してぶち当たる問題点もいくつかあるので挙げてみます。

(1)楽譜上で音符が上下してできるライン、鍵盤上での手の動き、そして聞こえてくる音の高低とが連動して捉えられない。
(2)指使いと音符が混乱する。いつの間にか指使いの数字を見ながら弾いていて、ポジション移動する時に「あれ?」と気づく。
(3)一つのメロディーを左右の手を入れ替えながら弾くことが苦手でしっくりこない生徒さんもいる
(4)次の音符との関係、つまり音程を見ない

一方、ランドマーク・リーディングの教本は、音名を覚える前に、ある音を出発点に、上がったり下がったりする「方向」や、音と音との「間隔」を読み取る訓練から始まります。音符が上の位置に上がったら手は右へ、下がったら左へ、、、と、音符の描く輪郭と手の動きを関連づける訓練があります。私が参考に購入したアルフレッド教本では、ヘ音記号はファ、ト音記号はソの音を軸に、ドレミファソを一度に読めるようにします。
結果、ミドルCはしばらく真ん中のドの周辺を左右の5本が弾くのに対して、ランドマークのアルフレッド教本はすぐに右はミドル、左は低いドのポジションで弾き、右手メロディーで左手伴奏の形にもすんなり導かれていきます。

■ミドルCの問題点はランドマーク・リーディングで解決するのか?

先に挙げた問題点について、(3)と(4)はランドマーク方式を取り入れることで改善が見込めると思います。それまで順調に進んできたのに(3)でひっかかってしまったら、途中からランドマーク・リーディングに変えるのも有りだと思います。ランドマークの要素は、読譜する上では後々必要になってくることなので無駄にはなりません。(4)については、隣の音に向かって「一つ飛ばし(=スキップ)」なのか、「お隣同士(=ステップ)」もしくは「同じ高さ」なのか目を向けるために、ランドマーク方式を部分的に取り入れるだけでも役立ちます。これまでのレッスンでもホワイトボードや5線譜を使用して、ステップとスキップの説明をしています。

(1)はランドマーク・リーディングで入った方が優位な感じはありますが、どれだけ差が出るかはデータがあるわけではないのではっきりとは言えません。焦らなくても、ピアノと接していくうちに自然と解決することではあります。
(2)に関しては、方式というより、指使いが全ての音に振ってあるテキストを使い続けることに問題があります。最初はどうしても音符より数字を見てしまうので、指番号と音が混乱したままとなってしまいます。例えば、トンプソンの導入本はミドルCメソードでありながら、一冊で広い音域を読むし、他の教材に比べて拍子や記号など多くの要素を学習できて良い教材だと思いますが、1巻、2巻と使い続けると、指使いの指示が多過ぎて音符読みの妨げになっています。ピアノ学習歴数年でも、4はファだと思っていたりします。
また、バスティン ヤングビギナーは、音符読みはテキスト中盤からミドルCで始まりますが、その前段階としてランドマーク・リーディングと同じように、音符が作る輪郭を図形のように読んで、運指に従って動かすことから始まります。その後、レベル1からは全調を学習するので、調性感覚を身につけたり、様々なポジションで弾くのがとても良いと思います。

■絵本のような楽譜

『ぴあのひけるよ!ジュニア』は男の子も女の子も喜びそうな可愛い楽譜です。げんこつやまのたぬきさんや、ふしぎなポケットなど、だれでも知っているような歌をすぐに弾けるので、子どもの興味を引きやすいメリットがあります。歌詞や先生の伴奏もついているので、歌っても楽しいですね。ミドルCメソードです。
『ぴあの どりーむ』幼児版も人気が高いので購入してみました。こちらの楽譜は、お母様に少しピアノ経験があれば、ピアノの先生でなくても教えてあげられるような内容になっています。「ピアノに興味持ってくれるかな?」とか、「教室に通うにはまだ早いかな?レッスン時間の30分に耐えられるかな?」などと、悩んでいるようでしたら、おうちでこの楽譜をお子さんとやってみるのも良いのではないでしょうか。同じくミドルCメソードです。
■さいごに、教本以外で大切なこと

上で述べたように、教本には音符を覚える方式や、用いる曲によって異なる傾向のものがたくさんありますから、先生の方針に合うもの、そしてお母様のご意向を伺った上で選ぶのが良いと思います。
そして、教本と同じくらい大事なことは、音の出し方について先生から指導してもらえるかどうかです。
時々、他で習っていながら私のもとに来られる方がいますが、きめ細かな指導を受けていないのかな?と思う事があります。グループレッスンだったり、先生とのレッスンでも電子ピアノだったり、、、事情は様々なのでしょうが、弾き方によって引き出せる音が違うことを感じた経験がないのか、耳と指がまるで関連づいていないケースが見受けられます。
げんこつやまのたぬきさんや、ミッキーマウスマーチを弾いている分には気になりませんが、クラシックのレパートリーを弾こうと思ったら「?」となりそうです。
子どもが弾く有名なバッハのメヌエットだって、強弱の他にもフレージングやアーティキュレーションがなければ、良い音楽に聴こえません。指は関節がぐにゃー、腕は上下にブンブン!!では、きれいな音楽になりません。
そういったことは、なにも「趣味だから」「音楽の道を目指すから」といった目的とは関係なく、日頃から先生に教わればできることで、そんなに難しくはありません。そして、後になってから身につけようとするよりは、最初から正しいことを習った方がずっと近道です。
モーツァルトやショパンが弾きたい、などと本人に夢がありそうだったら、やはりきちんと弾き方を見てくれる先生に習った方が、末永くピアノを楽しめるようになると思います。

最後が長くなりましたが、私のように専攻科目偏向型の人間にとっては、音楽教育は手探りな部分もあります。経験を重ねることで気づいた事をもとに、ギャップを埋めていけるようこれからも日々お勉強していこうと思います。
読んで下さった方、どうもありがとうございました!

 

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