キーシンとバレンボイム

On 2010年5月10日, in 音楽のこと, by admin

ワルシャワで行われた「ショパン生誕200年記念ガラコンサート」をNHKの再放送で流していました。夜中の番組でしたが、偶然夜更かししていたので見ることができました。
登場したピアニストは、エフゲニー・キーシンとダニエル・バレンボイム。二人ともピアノファンなら誰でも知っている超大御所です。
キーシンは1971年生まれの39歳、バレンボイムは1942年生まれで今年68歳!と年齢差がありますけれど、共通しているのは、二人とも10歳前後に神童デビューして以来、第一線の音楽家として活躍していることです。

キーシンはモスクワ生まれのロシア人で、14歳からコンサートで来日していて、日本にもファンが多い人気ピアにスト。私も初来日のサントリーホールでのリサイタルを聴き、こんなに弾ける子供(当時私はもっと子供でしたが・・・)がいるなんて!と驚愕しました。当時、日本ではショパンコンクールを制したブーニンが「ブーニン旋風」を巻き起こし社会現象となっていましたが、クラシックファンの間ではキーシンが出場していればこっちが優勝したはず!と言われるほどの才能を見せ付けていました。その後も順調にキャリアを伸ばし、アメリカや東西ヨーロッパへと活動を広げていきました。レパートリーも最初はショパンやプロコフィエフが多かったけれど、ロマン派とロシア音楽を中心に幅広く弾いています。数年前にパリのシャンゼリゼ劇場でブラームス、そして別の時にシューベルトの最後のソナタを聴いていますが、その成長ぶりと音色の美しさに感動をしました。その時の内容の濃さと比べると、昨日の放送で聴いたショパンのピアノ協奏曲は、よく回る指と、一音一音がはっきりと立っていてオーケストラ負けしていない技術面ばかりが目立ち、正直あまり感銘を受ける演奏ではありませんでした。客層も、キーシンのコンサートはいつもキーキーキャーキャーのファンが大勢来ているので、クラシック音楽界らしからぬ盛り上がりがあります。日本だけかと思っていたら、ワルシャワでも似たような現象が・・・でもファンサービス精神はさすがで、アンコールも出し惜しみせずに何曲でも弾いてくれるのです。キーシンのリサイタルだったら7.8曲はアンコールで聴かせてくれます。

次に登場したバレンボイムはユダヤ系のアルゼンチン生まれ。ピアニストとしての地位を世界で確立した後、指揮者になりました。そのためか、まるでオーケストラの指揮をしているかのように、すべての音符を鍵盤上で思うままに自由自在に扱っているようでした。バレンボイムのリサイタルはパリで一度だけ聴いたことがあります。ベートーベンピアノソナタ全集や協奏曲集のCDをよく聴いていたのでベートーベン弾きなのかと思っていましたが、その日のプログラムはドビュッシー。前奏曲の1集と2集を弾きましたが、これが本当に素晴らしかったのです!これまで聴いたことがないようなドビュッシーでした。響きがオーケストラの音色のように立体的に組み立てられ、バレンボイムの解釈により改めてドビュッシーの凄さを思い知ったリサイタルでした。
現在バレンボイムは指揮者としての活動がメインですが、昨日の番組を見る限りピアノの腕も衰えを見せておらず、ショパンの音楽を通して人生の喜びと悲しみを語っているような演奏ぶりに思わずテレビに見入ってしまいました。また、彼は平和運動も活発に行っておりパレスチナ自治区で演奏したり、イスラエルでワーグナーを演奏したり・・と、何かと話題になる社会的に影響力の強い音楽家です。(★かつてナチのヒトラーがワーグナーを崇拝していたことから、ワーグナーはイスラエルではNGな作曲家なのです)

ピアニストのヴィルトゥオーゾ的な面をエキサイティングに楽しみたい方には、キーシンの演奏会に足を運ぶことをお薦めするし、巨匠の、知性に裏付けられた深い味わいのある音楽の世界を堪能したい方にはバレンボイムのコンサート・・・またはCDやDVDで鑑賞してみることをお薦めします。いずれにせよ、これからピアノファンになろうかな、と思っていらっしゃる方にとっては絶対に聴いて損のない(むしろ絶対聴くべき)二人の大ピアニストです!

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